アメリカによるゴラン高原のイスラエル主権認定問題をざっくり確認

今月21日、トランプ大統領は歴代米政権の政策を変更し、1967年の第3次中東戦争を機にイスラエルが占領してきたシリア領のゴラン高原について、イスラエルの主権を認める方針を明らかにした。

これを受け、シリアは「主権と領土的一体性への侵害」であると批判を展開、またアラブ連盟のアブルゲイト事務局長も声明で「ゴラン高原は占領下のシリア領であり、米国の決定はその法的地位に何の変化も与えない」と強調し、「アラブ連盟は占領地におけるシリアの権利を強く支持し、この立場はアラブ諸国の賛同を得ている」との見解を示した。さらに、イスラエルと平和条約を結んでいるヨルダンや、レバノンなどの中東諸国も米国の一方的な主権認定を一斉に非難した。

 

 

トランプ政権の一方的な現状変更行為に対し国際社会で米国批判が広まるなか、25日にはイスラエルのネタニヤフ首相との首脳会談に合わせ、トランプ大統領ゴラン高原におけるスラエルの主権を認める宣言に署名した。 

アメリカがゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めることについて、シリアの後ろ盾となっているロシアは強く反対してきた。アメリカによる正式承認後、ロシアのラブロフ外相は「イスラエルの主権を認めることは重大な国際法違反だ。シリア危機を収束させる上で障害となり、ひいては中東全体の情勢を深刻化させる」と牽制している。

また、ロシア以外にも国連安保理理事各国からアメリカの行為を批判する声が相次いでいる。中国は「ゴラン高原は国際的に(イスラエルの)占領地と認識されている」と指摘した上で、「事実を変える一方的行動に反対する」と表明。理事国の欧州5カ国も共同声明で「違法な併合」を承認することに伴う結果に「強い懸念」を示した。

 

 

国際社会の反発が予想されたにも拘らずトランプ大統領が今回の署名に踏み切った目的としては、来年の大統領選挙を見据えイスラエルを擁護する姿勢を鮮明にすることで、キリスト教福音派など国内のユダヤ系支持基盤を固めることが挙げられる。

しかしその一方で、シリアやその後ろ盾のロシア、イランが反発し、緊張が一気に高まることも懸念される。またしても中東和平に暗雲が立ち込める形となった。