G7広島サミット、ロシア、中国、ひでぶ

本日5月19日から21日にかけて、G7広島サミットが開催される。

被曝地である広島で開かれ、非核保有国である日本が議長国となる今回のサミットを迎えるにあたり、岸田文雄首相の「核なき世界」の実現に向けた意気込みには並々ならぬものがある。

ロシア・ウクライナ戦争が長期化するなか、核の使用を仄めかすプーチンロシアに対し「核兵器を使ってはならない」という強いメッセージを送るという意味で、G7の結束、そして議長国・日本がいかにリーダーシップを発揮できるかに注目したい。

 
ポスト・コロナの世界経済、エネルギー・食糧安全保障、グローバル・サウスが直面する諸課題、地球規模での気候変動・保健・開発など議題は絶えないが、最重要テーマはやはりロシア・ウクライナ戦争であろう。
 
岸田首相が強調する「法の支配に基づく国際秩序」とは、すなわち「現代の国際社会には守らなければならないルール・原則・規範がある」ということであり、ロシアのウクライナ侵略に見られるような力による一方的な現状変更は認められない、ということだ。
 
ロシアのプーチン大統領ウクライナの領土を侵略するどころか、歴とした国連加盟国であるウクライナの主権さえ認めていない。
これは「法の支配に基づく国際秩序」を真っ向から否定する行為に他ならない。
 
ではなぜ、「法の支配に基づく国際秩序」を守る必要があるのか。
それは国際社会がアナーキー無政府状態)だからである。
 
国際社会には世界政府もなければ、世界警察もない。
国内社会のように法を破っても逮捕されて刑罰を受けるわけではない。
国際社会は限りなく無法地帯に近い社会なのである。
 
ゆえに、責任ある国家が自発的に、協力しながら国際的なルール・原則・規範を守ろうとしなければ、待っているのは暴力が支配する弱肉強食の世界、いわば『北斗の拳』の世界である。
イギリスの哲学者トマス・ホッブズは、これを「自然状態」と定義し、この自然状態は「万人の万人に対する闘争」を引き起こすと主張した。
 
ロシアによる侵略行為、ましてや核兵器の使用を認めてしまえば、いずれ北斗の拳の世界(あれは世界核戦争後の世界ではあるが)が現出することになりかねない。
 
国際的なルール・原則・規範を守りつつ、各国が協力し合い、外交交渉を通じて各々の国益を追求していく平和裏な世界か、暴力が支配する群雄割拠の北斗の拳的世界か、はたしてどちらが最大多数の最大幸福につながるのであろうか。
 
法の支配に基づく国際秩序を守ることの重要性、そして「核兵器を使ってはならない」というメッセージは、一義的にはロシアに対して向けられるものではあるが、ロシア同様、力による現状変更を厭わない中国に対するメッセージとしても機能する、あるいは機能しなければならないものでもある。
 
日本が直面するであろう最大の危機は、台湾海峡危機である。
台湾有事になれば、たちまち日本は前線国家となり、わが国の領土、そして国民の生命は危機に瀕することとなる。
 
中国にいかに対するか。
中国に戦争をさせないために、いかなる戦略を策定し、実行するか。
第一に対中抑止であり、そして第二に抑止が機能しなかった場合、すなわち最悪の事態を想定し、それに備えることである。
 
台湾海峡危機が現実味を帯びるなか、今後の日本の安全保障のプライオリティは以前にも増して中国にあると言えよう。