日中「海上連絡メカニズム」暗礁に

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以前の記事とも重なるが、「対話による平和」の追及は、あくまで双方の意思がなければ上手くは行かない。

 

「海上連絡メカニズム」は2008年に日本政府のイニシアティブで協議が開始されたものであるが、実質的な進展がほとんど見られなかったのは、中国政府側が一方的に協議を中断したからであった。

 

その後、12年までの4年間で3度にわたる「日中防衛当局間の海上連絡メカニズムに関する共同作業グループ協議」が実施されたものの、「同メカニズムが、不測の衝突を回避し、両国防衛当局間の相互信頼と実務協力を増進させるとともに、両国の戦略的互恵関係の包括的な発展を推進することに資する、との認識で一致(※)」するにとどまっている。

 

そして昨年11月の日中首脳会談での合意を機に、今年1月に協議が再開されたものの、今回日本側が提示した「連絡メカニズムの対象範囲に領海・領空を加えない」という合意文書案に中国が応じておらず、再び協議が暗礁に乗り上げようとしていると報じられている。

 

中国側の妥協を引き出すには、習近平やその顧問、共産党政治局常任委員会のメンバーなどが何を見返りに求めているのかを冷静に見極め、それ相応の「アメ」を与える必要がある。しかし、彼らのコスト‐ベネフィット計算や意思決定過程は知りようがない以上、そこは日本の戦略的な駆け引きと外交力が試されるところである。

 

蓋し、日中双方にとって「平和のための対話」であるにも拘らず、国際政治においてはそれが一筋縄にはいかないという現実を知る上ではいいニュースではないだろうか。もちろん日本の安全保障にとっては全然いいニュースではないけれど。

 

(※)日中防衛当局間の海上連絡メカニズムに関する第3回共同作業グループ協議(結果概要)