北朝鮮のミサイルから日本をどう守るか⑥

 
9月15日正午過ぎ、北朝鮮は今年に入って5回目となるミサイル発射実験を行い、短距離弾道ミサイル2発が石川県・能登半島沖の舳倉島から北に約300キロの海域、日本の排他的経済水域EEZ)内に落下した。
 
北朝鮮による弾道ミサイル発射は今年3月25日以来、約半年ぶりであり、日本のEEZへの落下は2019年10月以来である。
 
今回発射された2発のミサイルは、通常の弾道ミサイルのような放物線軌道ではなく、一度下降した後に再び上昇する変則的な軌道を描くものであった。
 
そのため、発射直後の政府による発表では「日本のEEZ外に落下したと推定」されていたが、その後の分析で落下地点が修正されることとなった。
 
韓国聯合ニュースは、変則軌道の新型短距離弾道ミサイル「KN23」の改良型である可能性を示唆している。
 
なお、北朝鮮は9月11日から12日にかけて、飛行距離1500キロの新型長距離巡航ミサイルの発射に成功したことを公表しているが、北朝鮮の意図としては、一連のミサイル発射実験を通じて軍事力の増強を誇示し、アメリカを挑発することで、具体的な非核化措置をとることなく、経済制裁の解除ないし対米交渉における優位を引き出そうとしていると見ることができる。
 
現時点では、北朝鮮に日本を攻撃する意図があるとは思えないが、日本にとって北朝鮮のミサイルが深刻な安全保障上の脅威であることに変わりはない。
 
たとえ示威を目的としたミサイル発射実験にせよ、もし北朝鮮が「手元を狂わせた」として、そしてもし日本が迎撃に失敗したとしたらどうなるだろうか。
 
実際、変則軌道ミサイルの迎撃は通常の弾道ミサイルに比べ格段に難しいとされる。
 
非核化することなく、アメリカの妥協を引き出そうとする北朝鮮は、今後もSLBM(潜水艦発射型ミサイル)や長射程ミサイル、変則軌道ミサイル等の更なる開発を進めていくと見られる。
 
日本にとっての安全保障上の脅威は、増大の一途を辿っていく。
 
一方で、イージス・アショアの導入断念以降、日本のミサイル防衛は足踏み状態が続いている。
 
何より、「厳重に抗議するとともに、強く非難する」以外に取り立てて何かするわけでもない日本は、北朝鮮に舐められている。中国やロシアも同様であろう。
 
このような現状について、すなわち国際社会における今の日本の立ち位置(周辺国からの見られ方)に対し、日本国民は何を感じ、どう考えているのだろうか。
 
繰り返しになるが、すべての周辺国・地域 (中国・ロシア・北朝鮮・韓国・台湾)が中距離弾道ミサイルおよび巡航ミサイル保有している状況の中で、日本も相応の抑止力・防衛力を整備することは極めて合理的な政策判断である。
 
ミサイル防衛であれば、まずは敵基地攻撃能力を保有すべきだ。
 
そしてその上で、専守防衛という「自衛隊殺し」な過去の遺物を放棄し、政治的合理性を考慮しつつ、軍事的合理性の極大化を図ること。日本の安全保障戦略の根幹を成すべきはそれであろう。
 
無論、それが平和主義の放棄であるとか、軍国主義への道であるという批判は当を得ない。
 
すべては日本の平和のため、再び戦争の惨禍が起ることのないようにするためである。