お金の話⑤――防衛費の引き上げ?

日本を含む同盟国に対して「応分の負担」を求め続けるトランプ政権であるが、ビジネスマン出身のトランプ大統領は国防費の対GDP比、つまり「数字」に強いこだわりを見せている。

 

本来、国防費は結果にすぎない。あくまで国家の安全保障戦略ないし軍事戦略に基づく人・物品両面における各種防衛力整備に必要となる費用を年度毎に算出したものが国防費であり、数字を先に決めてしまうのでは本末転倒である。

 

しかし、対米関係が極めて重要な政策課題に位置づけられる日本にとって、NATO基準の対GDP比2%どころか1%にも満たない防衛費の見直しは避けられない。トランプ政権のアメリカを納得させるためには、数字で示すよりほかないのだ。

 

とはいえ、既に毎年漸増している防衛費を一気に増額するというのは現実的ではない。トランプ大統領の意向を忖度して取り計らうために防衛費を増やすというのでは、国民の理解を得ることは到底難しいだろう。

 

そこで日本政府は、NATO加盟国の国防費の算出方法にならい、旧日本軍の軍人などに支給される恩給費や国連平和維持活動(PKO)の分担金など関連費を盛り込むことで、対外的な見掛け上の防衛費を増額し、対GDP比1.3%程度まで引き上げるという方針を立てたのである。

  

(つづく)