お金の話④――対GDP比の引き上げ

これまで概ねGDP1%の枠内で推移してきた日本の防衛費であるが、昨今、政府はその対GDP比の引き上げを検討している。

引き上げが検討されている理由は、GDP1%の防衛費が「少なすぎる」と考えられているからに他ならない。

では、一体どこの誰が日本の防衛費は少なすぎると考えているのだろうか。

 

お察しの通り、ドナルド・トランプ米大統領である。

 

トランプ大統領はこれまで、日本および韓国、そして北大西洋条約機構NATO)加盟国に対して「応分の負担」、とりわけ米軍駐留経費の負担増を幾度となく要求してきた。

特にNATOに対しては大統領就任以前から「時代遅れ」であるとの持論を展開しており、ことある毎に「公平な割合での貢献」を主張している。

 

冷戦期より「世界の警察官」の役割を担ってきたアメリカであるが、今日においてもNATOの防衛支出全体の約7割を一国で占めている事実が示す通り、ヨーロッパの集団安全保障はアメリカに大きく依存している。

 

しかしその一方で、アメリカ以外のNATO加盟国の多くが対米貿易黒字を実現しながらも、NATO基準となっている国防費の対GDP比2%を満たしていない。加盟国28カ国のうち、対GDP比で2%以上の国防費を支出しているのはアメリカ、イギリス、ギリシャポーランドエストニアの5ヵ国だけである。トランプ大統領が「応分の負担」を求める姿勢を頑なに崩さないのも無理はない。

 

生粋のビジネスマンであるトランプ大統領にとって 、これまでのような同盟国とのアンフェアな関係性をリバランスしていくことの優先度は高い。

そしてその矛先が、アメリカの同盟国の中で最も経済力の高い国の一つである日本に向けられても何らおかしくはないのである。

 

(つづく)